35mmシステム一眼レフの一時代を築き、
その後の一眼レフのあり方に大きな影響を与えた、
「オリンパス OMシステム」が、
30年の歴史に終止符を打ち、販売終了になるという。

時代はまさに、銀塩からデジタルに移行しつつあり、
オリンパスはその先端を走ってきたメーカー。

さらに、今年中には4/3インチCCDをベースとした、
レンズ交換式一眼レフシステムの正式発表を控えていることを
考えれば、今回の販売終了の発表は実にタイムリーなものといえなくもない。

また、昨今の記者発表などでも分かるように、
同社のカメラ事業も、やや厳しい状況であり、
今後、銀塩カメラの開発リソースをデジタルに割り当てなければ、
この激しい競争を生き抜けないというところもあるだろう。

もちろん、今回の「OMシステム」との決別は、
オリンパスという企業の運営方針として、
時代の流れを捕らえた、正しい選択だと思う。

だが、その一方で、この「OMシステム」は、
35mm一眼レフの世界を大きく変革した、
カメラ史に残るシステム一眼レフであったことも忘れてはならない。

そして、この「OMシステム」で、
写真の楽しさを学び、育った、多くのユーザーがいる。

そんなユーザーのひとりとして、
私なりの「OMシステム」へのレクイエムを
その生まれ代わりとなるであろう
4/3インチデジタル一眼レフへの想いとともに記したい。



「OMシステム」は、いま見ても、
実に完成度の高い、壮大なシステム一眼レフであり、
当初からのキャッチフレーズであった「ミクロからマクロまで」を
文字通りカバーした、実に夢のあるシステムだった。

そのシステム構成は実に壮大で、ありとあらゆる分野を
OMシステムでカバーできる、
無限ともいえる可能性を感じさせるに十分なものだった。

さすがに、1972年発表当初は”構想”といったほうが正しかったが、
それでも、当時のニコンやキヤノン、ミノルタなどのシステムよりも
可能性に満ちあふれているように感じられたし、
トプコンやミランダ、ペトリといった、旧態然とした当時の一眼レフシステムよりも
遙かに魅力的で、”夢”のある存在だった。

もちろん、ボディーもきわめて魅力的なものだった。

第一弾として投入された、初代「OM-1」(当初は「M-1」だった)ボディーは、
当時としては、とにかく画期的といえるほど小型軽量でありながらも、
本格的な機能を備えており、斬新な操作性とファインダーへのこだわりや
メカニカルシャッターのマニュアル機故の信頼性も大きな魅力だった。

その後登場した、AE機である「OM-2」では、
フィルム面の反射光をリアルタイムで測光し、
AEやストロボ制御を行うダイレクト測光を搭載するなど、
実に斬新なシステム一眼レフボディーだった。

それを支える「OMズイコー」レンズシステムも魅力的なもの。

当時、ニコンは伝統の「ニコンF」マウントを
踏襲するため外爪での絞り連動という苦肉の策を取っており、
キヤノンは操作が面倒なスピゴット(リング締め付け式)で、
しかも、同形状マウントでありながらも、
開放測光ができないFLレンズという資産もあり、
カメラとレンズの連携という点に苦慮し、
なかなか、AE主流の新世代一眼レフを構築しにくい環境だった。

さらに、これらのニコンマウントは、マウントの内径が小さく、
大口径レンズなどの開発への足かせになり始めていた。



そんな状況のなか、
オリンパスはAEと大口径時代を見据えた
OMマウントを新採用することで、
よりさまざまなニーズに応えられる、新システムを構築した。

また、レンズシステムの点でも、
大口径で高価格なハイスペックタイプと、
F値を抑えた小型軽量で実用性能重視の普及価格タイプを
明確に分けたラインナップ構成を他社に先駆けて実践していた。

そのため、そのシステムのとっかかりとなる基本システムが
比較的手頃な価格帯で構成できた点は大きなポイントであり、
これが発表当時の「OMシステム」の基盤を支えていたといってもいい。

そして、当時から、ニコンやキヤノンがどちらかというと、
報道分野を初めとしたプロ指向のシステム展開であったのに対して、
オリンパスOMシステムは、本格的な一眼レフを手頃な価格で使ってみたいという、
アマチュアの夢を叶えることを第一義とした
システム展開をしていたのが、とても印象的だった。

もちろん、OMシステムが構築されたベースには、
当時の一眼レフ市場における、同社の苦難がその背景にある。

なにしろ、オリンパスは当時、一眼レフシステムはあったが、
それは当時好調だったハーフ版ベースの「ペンF」系であり、
35mm一眼レフ市場では、競合他社に大きく水を開けられていた。

逆に、競合他社は、当時、AEや大口径レンズといった、
システム構築時に重要視されていなかった難題に対して、
既存システムとの互換性を取りながら解決せざるを得ないという
ジレンマがあり、理想的なシステム展開ができない状況にあった。

これが、発表当時のオリンパスの置かれた状況であり、
「OMシステム」を作らざるを得なかった背景でもある。



オリンパスの4/3インチCCDベースの
レンズ交換式デジタル一眼レフ構想
を知ったとき、
「これはデジタル版の”OMシステム”」だと、直感した。

デジタルの時代になり、
オリンパスはコンパクトカメラタイプのデジタル機で先行した。

だが、レンズ交換式デジタル一眼レフはなく、
上級機といっても、基本的にはパーソナル機プラスαのサイズの
小型撮像素子をベースにしたものであり、レンズもズーム固定式だ。

もちろん、無理の少ない小型CCDと専用設計のレンズにより、
システムとしてのバランスが取れているため、
カメラ単体としての実力は十分に高いわけだが、
システムとしての拡張性に欠ける点は否めない。

そんな状況のなか、
他社が既存の35mm一眼レフ用レンズをベースに、
高価な大型撮像素子を搭載した、
レンズ交換式デジタル一眼レフで続々市場に参入してきたわけだ。

そんな状況のなか、オリンパスは今年、
4/3インチCCDと新レンズマウントによる交換レンズを備えた、
”デジタル一眼レフに最適化された”
独自のデジタル一眼レフシステムの構想を発表した。

「小型軽量」「魅力的なレンズシステム」「比較的手頃な価格設定」・・・。

そう、この新システムの根底に流れるフィロソフィーは、
30年前、35mm一眼レフの理想像として、
新たにシステムを構築した「OMシステム」そのものといえる。

もちろん、現時点でその4/3インチCCDデジタル一眼レフシステムが
どんな絵を映し出すのか、ボディーやレンズがどれくらい小型軽量になるのか、
システムとしてのどれくらい手頃な価格になるのか。

これまでの数少ない情報を総合しても、
十分に良質な画像と、35mmベースのモデルより小型軽量になること。
さらに、価格も標準的なレンズを含めて20万円以下を想定するなど、
ごく断片的なものしかわからない。

それでも、この新システムが、
既存の銀塩35mm一眼レフ用レンズシステムの”しがらみ”から離れ、
デジタル一眼レフの理想像を追求しようとしている点は
容易に理解できる。

今回の発表で35mm一眼レフシステムである「OMシステム」は、
2003年3月をもって、販売を完了することが確定した。

だが、その精神は、それと前後して登場するであろう、
4/3インチCCD搭載デジタル一眼レフに、きちんと受け継がれることだろう。

私は、その来るべき、デジタル時代の”OMシステム”に大いに期待したい。

(2002年1月18日記)




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