世界中のデジタル一眼レフユーザーが、
待ちに待ったその日が、ついにやってきた!

 日本時間9月25日13時、
キヤノンはデジタル一眼レフの
新フラッグシップとなる「EOS-1D」を正式発表した。

 キヤノンにとって、特別な意味を持つ”EOS-1”シリーズ。
それはフラッグシップ機であると同時に、報道やコマーシャル分野を始めとした、
第一線のプロカメラマンのための、
"真の道具"として、時代の要求に応えてきた、輝かしい系譜でもある。

 そしていま、その"EOS-1"シリーズの一員であり、
今後のデジタル時代のプロ機のあり方を、
現在実現しうる限りの技術で実現させたのが、今回の「EOS-1D」といえる。


 今回、幸いにも、この「EOS-1D」のベータ版に短時間ながら
触れることができたので、その感触をレポートしよう。

 ただ、先に断っておくが、画質面に関しては
まだ最終的なチューニング中のため、同社との約束により、
画質に関する詳細なコメントは掲載できない。

もちろん、この点に関しては、後日、改めてレポートする予定なので、
画質面に関しては、そのときまでお待ちいただきたい。




満を持して登場した
「最新型のEOS-1」




 「本機の開発の狙い。それはまさしく『最新型の"EOS-1"を作る』こと」。内覧会の冒頭で同社はこう語った。

 そして、「トップの機種でトップじゃないと本当のトップじゃない」と語り、同社社長は常々「キヤノンはカメラの世界のトップじゃないきゃいけない」とカメラ事業に対する熱意を語っているという。そして、その期待に応えるべく、満を持して登場したのが「EOS-1D」なのだ。

 このEOS-1Dが目指したものは、「プロに耐える高画質の実現」「プロ機としての高信頼性・操作性の実現」という。

 これは、本機の概要を知れば、すぐに納得できることだろう。
 詳細な仕様については、同社Webを参照いただきたいが、その要点をいくつかあげておこう。

・秒間8コマ、連続21コマの超高速連写。
・28.7×19.1mm、1ピクセル11.5ミクロンの大型415万画素CCD。
・レンズ焦点距離の35mmカメラ換算値は1.3倍。
・デジタル一眼レフ初の防塵防滴仕様。
・視野率100%、倍率0.72倍の一眼レフファインダー。
・一回の撮影で、JPEGとRAWの両方のデータを保存可能。
・シャッター速度は1/16,000秒〜30秒。バルブ撮影可能。
・感度はISO200-1600は1/3段ごとに設定可能。
・TTLと外部センサー併用によるハイブリッド・オートホワイトバランス。

・「EOS-1V」と同等の55msのレリーズタイムラグ。
・「EOS-1V」と同等の87msのファインダー像消失時間。
・「EOS-1V」と同等の45点測距式オートフォーカス。
・「EOS-1V」と同等の15万回ショットの耐久性。

上記のような点を見ただけでも、本機がいかに本格的なモデルとして開発されたのか、十分理解することができるだろう。

それと同時に、現在の銀塩ハイエンド一眼レフである「EOS-1V」と同じ感覚で使える点をきわめて強く意識した点も実に明確だ。






●画質と高速化を両立させた415万画素モデル

 本機のスペックを見て、なぜ「EOS-1D」は415万画素CCDを搭載しているのか?という、素朴な疑問を抱く人は、かなり多いことだろう。ハンドインプレッションの前に、その点について、紹介しておこう。

 本機の撮像素子は、CMOSではなく、CCDを採用している。これは以前から「ハイエンド機はCCD」という方向性を打ち出していた同社の予告通りの採用といえる。


 サイズは、28.7×19.1mm。これはD30の素子よりも一回り大きく、同社の600万画素機である「EOS D6000」とほぼ同等といえる。そのため、35mm換算では約1.3倍。同時発表の16-35mmF2.8Lを使えば、21-46mmレンズ相当の画角になり、ワイド側の実用域はほぼカバーできるようになった。

 1画素あたりのサイズは、11.5ミクロン。パーソナル機と比較するとケタ違いに大きな受光部であり、感度やノイズの点でもきわめて有利な素子といえる。

 さて、先の疑問に関して、キヤノン側は「415万画素はプロ機としての解像力と、後行程でのハンドリング、カメラの高速化」といった点を、本機のコンセプトの照らして見た場合に、もっともバランスの取れるものとして選択したと説明している。

 さらに、画質に関しては、実質的な解像感を重視し「解像力重視」のセッティングをしているという。
 具体的には、CCD前面にある擬色軽減用のローパスフィルターとソフトによる擬色軽減とのバランスを挿しているわけだが、基本的には「偽色はソフト処理で、光学ローパスフィルターは弱めに」という考え方という。

 確かに、画素数を増やせば、解像力は向上するが、通常、大型CCDを搭載した300万画素級モデルでも、実際にA4サイズを超える印刷原稿として十分通用するレベルの実力を有している。そのため、400万画素級でもよほど大きな印刷原稿として使ったり、一部分だけをトリミングして使わなければ、実用レベルといえるわけだ。

 一方、高画素化により、CCDからのデータ読みだしはきわめて重くなり、本機のように秒間8コマもの超高速連写を実現するのは難しくなる。

 本機の場合も、CCDから並列読みだしにより得たデータを、信号読みだし用の「映像エンジン1」で処理し、その後、具体的な画像を生成するための信号処理をする「映像エンジン2」の二段構えで処理しているという。その結果として、415万画素CCDながらも、125msでの読み出しを可能にしているわけだ。ちなみに、「D30」は330msのため、約4倍弱もの高速化が図られているわけだ。

 上記でも分かるように、本機は単純に高画素化による高解像度を指向しているモデルではない。むしろ、これまで「EOS-1V」が担ってきた分野の中でも、とくに高速連写性が要求される報道やスポーツといった分野を重視して開発されたモデルといえる。

 少々乱暴にいえば、同社のラインナップでいえば200万画素の「EOS D2000」を凌駕する連写性能とAF測距性能を実現しながら、それと同時に600万画素機である「EOS D6000」に近い(匹敵する?)解像感を得ようというモデルといえる。

 ライバルとなるニコンは、「D1」の発展系として、高速連写重視の「D1H」と画質(解像度)重視の「D1X」という、目的の異なる2機種を開発した。そして、キヤノンは今回の「EOS-1D」では、「D1H」を凌駕する高速性と「D1X」に迫る高解像度を、一台でカバーしようとしているわけだ。



●妥協のない"心地よさ"


 「こんなに心地いいデジタル一眼レフって、初めてだなあ〜」というのが、本機を使っての、偽らざる第一印象だ。

 とにかく、これまでのデジタル一眼レフは、どこか「デジタルだから仕方ないなあ〜」という、ある種の妥協を感じざるを得ないものが多かった。

 この感触を別の角度からいえば、同社の35mm一眼レフの最高級に匹敵するだけの性能や操作感を実現できていなかったといってもいいだろう。

 これは最新鋭機である「D1X」でも35mm判の「F5」と比べれば、やはりデジタルであることを意識してしまう瞬間がある。

 だが、「EOS-1D」は違う。このカメラは、まさに「EOS-1」シリーズの一員であり、その系譜を最新の位置にポジショニングされるだけの実力を備えたモデルといえる。

 その使い心地は、まさに"軽快"のひとこと。

 一眼レフカメラとしての基本部分は、定評のある35mm一眼レフ「EOS-1V」のものを踏襲しているため、なんら不満のないレベルに仕上がっている。

 その使い心地は、まさに「EOS-1V」そのもの。なにしろ、ホールド感から基本的な操作性、さらにシャッターを押したときの微妙なレリーズタイムラグまで同等であり、「EOS-1V」を使っているユーザーであれば、なんの違和感もなく、その日から互換の一部であるかのように扱うことができそうだ。

 それと同時に、「EOS D2000」のユーザーでも、AF測距が45点になった点を除けば、より軽快なデジタル一眼レフとして、すぐに慣れてしまうことだろう。

 そして、「EOS D30」のユーザーが本機に触れたら、"フラッグシップ"としてのデジタル一眼レフという存在を、きわめて強く意識せざるを得ないだろう。

 率直に言ってしまえば、「EOS D30」とは、ポテンシャルが違いすぎて、「D30」の世界に戻れなくなるかもしれない。



●心の余裕が生まれる超高速連写

 そして、感心するのが、その連写性能。シャッターボタンを押していれば、秒間8コマもの"400万画素"のフル画像が最高で21コマも得られるわけだが、あまりに軽快で、撮ったコマがすべて記録されているのか、不安になるほど。

 さらに驚くのは、バッファーの解放時間。実際にで秒間8コマで連続21コマ撮影しても、そのデータを処理するのに時間がかかっては、次のショットが撮れない。
 本機の場合、ファインダー横に残りの連写可能な枚数が適時表示されるのだが、連写を終えて、その枚数が21まで戻ってゆく速度は、到底信じがたいほどの速さで、あっという間に、処理を終え、バッファーを解放してしまう。
 それに要する時間は、わずか4秒程度しかかからないのだ(フル画像・JPEG時)。
 もちろん、CFカードへの書き込み時間の問題もあるのだが、高速なカードを使用すれば、軽快を通り越して、凄まじいと形容した方がいいような世界が体験できる。

 もちろん、1コマ撮り時でも、実に軽快でリズミカルな撮影ができる。さらに、次のシャッターチャンスを狙うときの"心の余裕"になるため、結果的に、いい写真が撮れる。このあたりが、カメラの面白いところであり、高価で、大きく重くても、高速連写ができる最高級機を普段から愛用する所以でもある。






●最高級機ならではの充実した基本性能

 カメラとしての基本性能の高さは、すでに「EOS-1V」で定評があるので、ここで改めて記する必要もないだろう。その感触はまさに「EOS-1V」なので、当面は、サービスセンターや店頭で「EOS-1V」に触れてみれば、その感触を実感できることだろう。

 使ってみて、何より感心したのは、ファインダー視野率が100%を実現している点と、ファインダー倍率(どれくらいの大きさに見えるか)が0.72倍と十分に大きな点。さらに、アイポイントが20mmと長い点にある。

 これらは一眼レフにとって、その使い勝手を大きく左右するポイントだけに、きわめて重要なもの。実際に、最高級機を愛用する人の多くは、連写性能よりも、むしろ、ファインダーの良さを重視している人が多いのもこのためだ。

 そして今回の「EOS-1D」は、まさにEOS-1の系譜の一員らしい、シッカリとした基本性能を備えており、明るくクリアで四隅まで色付きのないファインダーを見ていると、それだけで写欲が沸くといっても過言ではないレベルの仕上がりを見せている。



●やや複雑になった液晶メニュー


 今回のEOS-1Dは、「D30」よりも遙かに多彩な設定やカスタマイズが可能だ。詳細は同社Webに譲るが、およそ、考え得る範囲の設定は、ほとんど網羅されているといっても過言ではない。

 しかし、その一方、設定メニューの階層が増え、やや操作性が複雑になっている点は、若干気になるところ。
 もっとも、ボディー上面で、「露出補正」「ISO感度」「AEB(自動段階露出)」「ドライブ(単写・連写切り替え)」「ストロボ調光レベル」などが簡単に設定できるため、通常は背面液晶での詳細設定を操作するケースは少ない。

 さらに、ボディー背面下のモード液晶下のボタンで、画質モードやホワイトバランスも即座に設定できる点はなかなか便利だ。

 また、画質モードでは、今回、JPEGとRAWの両方のデータを同時に記録できるモードが新設された点はとても便利なもの。実際、すぐに使ったり、究極の画質を要求しないのであればJPEGでも十分だが、ときに同じカットでRAWデータが欲しいときもある。とくにホワイトバランスに不安があるときなどはなおさらだ。そんなときでも、このモードを使えば、安心して撮影できる。ただし、同時保存するため、約6MB程度の容量が必要になるので、その点だけは要注意だ。




●ワイドレンズで有利な大型CCD

 実際に使ってみて、やはり便利なのが、「D30」よりさらに大型の撮像素子による倍率変化の少なさ。具体的に本機では、35mmカメラに換算した場合、その換算値は1.3倍になる。つまり、50mmレンズでは、65mmレンズ相当の画角になるわけだ。

 換算値1.6倍の「D30」に比べると、望遠側でのさらなる望遠効果は少ないわけだが、ワイド側での撮影では、劇的といえるほどの違いがある。

 たとえば、手持ちの17-35mmレンズの場合、本機では35mmカメラ換算で22mmもの超広角となる。これが「D30」の場合には約27mmになるのだから、この差は数字以上に大きい。通常の35mmでの撮影でも、20mm以下のレンズを超広角レンズをケースはきわめて少なく、22mm相当まであれば、実用十分。しかも、本機は画面の縦横比が2:3と35mmカメラと同じ比率のため、余計にワイド感のある絵が得られる点も見逃せない。

 これなら、「D30」では不可欠だった14mmレンズ(D30では22.4mm相当)も、「EOS-1D」では常時持ち歩かなくても良さそうだ。



●期待される画質

 今回、画質はまだ最終的なチューニング中のため、実写画像は掲載できず、画質について明確なコメントをしないという条件で、本機を使った。そのため、その実力について明言できないが、ただ一言「安心していい」とだけ期しておこう。

 また、キヤノンのWebには、すでに2種類のサンプル画像がアップされているので、それを見る限りは、なかなかの実力という感じだ。

 もっとも、本機には5種類もの絵作りモードがあり、そのどれで撮影したものなのか明記されていないので、判断は難しいところもあるが、画像の素性はなかなか良さそうな印象だ。

 最近のキヤノンの絵作りには目を見張るものがあり、この感じでさらにチューニングが進めば、かなり期待できる画質に仕上がるのとは確実だろう。

キヤノン提供の「EOS-1D」サンプル画像




●75万円という価格

 価格は75万円。この価格を高いと見るか、安いと見るかは、人それぞれだろう。

 もちろん、絶対的な金額としては高いわけで、D30が楽に2台買えることを考えると、おいそれと購入できる金額ではない。

 もっとも、企業として購入するのであれば、報道や出版系のように全社的にデジタル化が進み、フィルム代がかからなくなることを考えれば、さほど高価な買い物ではないかもしれない。

 ただ、個人レベルでは、若干の値引きがあっても、月々1万円で72回払いでギリギリという金額。デジタル一眼レフの進化を考えると、月3万円で24回払いくらいが妥当なところか?

 また、ややおかしな計算かもしれないが、「D30」と「EOS-1D」との価格差が約39万円あるわけだが、30万7000円もする純正の14mmレンズを買わなくてもよければ、システムとしての価格差はグンと縮まる。

 これはあくまでも仮定での話だが、そんな計算をしたくなるほど、魅力的なモデルといえる。

 少なくとも、EFレンズのユーザーであれば、これからのレンズへの投資を含めて、本機の購入を本気で検討するだけの価値は十分にあるモデルといえるだろう。

 発売は12月中旬。まだ二ヶ月半先の話とはいえ、初回出荷分は年末まではもたないだろう。もし、購入する意志のある人は、すぐに力のある販売店で予約することをオススメする。そしてその足で「EOS-1V」に触れ、その感触を確かめておきたい。



2001年9月25日記
山田久美夫



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