「CAMEDIA E-10」開発者インタビュー

(第4部)


参加者
(以下、敬称略)

DI事業推進部 部長 小島佑介
DI事業推進部 開発2グループグループリーダー 朝倉康夫
DI事業推進部 開発2グループ課長代理 藤井尚樹
DI事業推進部 開発1グループ 伊東猛
DI事業推進部 開発3グループ課長代 樋口正祐
DI事業推進部 開発3グループ課長代理 鈴木隆
DI事業推進部 開発4グループ課長代理 国重恵二
光学開発部   開発1グループ課長代理  宮内祐司



聞き手
山田久美夫



●逆につけてもズーミングできる花びら型フード

山田 E-10には、効率のいい花びら型フードが付いていますよね。これってすごくオタッキーで好きなんですけど、これは割と早い段階からそういう風にしようよっていう話があったんでしょうか。

朝倉 これは、伊東の方で。

伊東 はい。もう最初からですね。もう折角こういうカメラを造るんだったらば、フードは必須でしょうと。普通円筒型ですと、やはり機能的にはバランスが悪いですから、花びら型といいますか、それを付けますというのは、最初から決めたというか、ありましたね。

朝倉 どうせ、フードをつけるなら、もう最高性能のフードにしようと。写らないところは、ぎりぎりまで光を蹴ってしまえと。こだわりですね、そういうはありましたね。

伊東 かなりフード効果はありますね。

山田 ですよね。いや、このフードを見て、これすごいなと思ったんですよ。すいません、僕自身が結構、普通の銀塩のカメラでも見て、一番判断するのって、レンズフードとストラップなんですよ。

一同 ふーん。(笑い)

山田 で、そこまで気を使っているものは、悪い物の訳がないんですよね。正直なところ。大体そういうところって、手を抜きやすいし、最後投げちゃえばなんとでもなっちゃうんで。

伊東 まあ、無ければ無いで、そうかなと思ってくださる方も、いるにはいますからね。逆に、その良さを分かっていただけると、すごい嬉しいですけどね。やっぱりね。

山田 そういうこだわりって、いいですよね。

朝倉 ありがとうございます。

山田 しかも、逆にちゃんと付くじゃないですか。収納時に。

伊東 それについては、逆につけたときでも、ちゃんとズームリングのところに手が空くように、付くようにしてますので。

山田 そうなんですよね。これには参りました。そうそう。ただ、逆につけた時の位置が、良く分からないというのがありますけどね。

朝倉 指標がちょっと目立ちにくい。

山田 指標が目立ちにくい。

伊東 フォーカシングには使えなくなりますけど、ズームのとこはちょうど普通に正位置に構えて手が行くようになっています。このあたりはこだわりがあって・・・。

山田 あと、スリープから起き上がる時の時間、ってもうちょっとなんとかならないんですかね。(笑い)

鈴木 はい。その点もですね、今回ちょっと間に合わなかったんですけど、(笑い)ネタはありますので、(笑い)心苦しいんですが、次回にご期待下さい。(笑い)

山田 でも、大抵の開発スタッフの方は、聞いても、大体時間切れのものが相当あるんですよね。大体ユーザー側で使っていて、残念なのは、大体時間切れだって言われちゃうんですよ。(笑い)で、次回期待してくださいって言われて、その人がスタッフにいなかったりするんですよ。(笑い)それが一番怖いんですけど。

鈴木 ですね。

朝倉 まあ、鈴木は次、ちゃんとやって、もっと良い物を出してくれるでしょう。

山田 大丈夫ですね。

鈴木 はい。

山田 で、それと、このクラスになると、厳しいとは思うんだけど、生活防水って何とかならなかったんでしょうか。

朝倉 生活防水ですか。これは、そういうつもりで設計すれば、出来ない話ではないですね。出来ますこれは。はい。ただ、お客さんがどういう使い方をするか、商品のコンセプトですか。それによって今回のカメラが決まりますので、今回は生活防水は省かせていただきました。また、お客さんから、そういった要望ですね、が多々出てきましたら、そういう機種というのも当然出来ます。弊社の場合、生活防水というのは、何処よりも沢山カメラとしてはやってきておりますから、技術的には何も問題無く出来ると思っています。

山田 むしろ、このクラスよりも、もっと下のクラスの方が必要だと思うんですけど。


●銀塩に近い、こだわりの絵づくり

山田 あとは、絵作りの方の話なんですが、今回の絵って、結構安定していますよね。

朝倉 まず、絵作りですけど、今日は絵作りの方、あるいは露出の方を担当した樋口が来ておりますので。まあ、最初は私の方から言いますけど、デジタルカメラというのは、オートホワイトバランス等で、自動的に色を合わすとかってありますけど、今までのカメラというのはどうしても、予測したもの、撮影者が予測したものと若干違う色が撮れたり、時々とんでもない色に、間違って見ちゃったりするということがありました。
 このカメラを、E-10をやります時に、そういうことが無いように、大体想像した通りに、予想した通りお客さんがその色に撮れる、というのをまず狙っています。それから、もうひとつ、絵作りという点では、測光ですね、被写体の明るさを測る。これは、本当に使われるプロの方は、マニュアルでやるでしょうし、あるいは絞り、中央重点測光とか、スポット測光を使うでしょうけど。そこまで使えない方、撮影はプロでも、プロとして仕事として使っても、撮影の細かい技術的には、そんなに高いレベルじゃないプロの方、というのも沢山いるかと思います。そういう方には、露出が破綻ないように、どんな場合でもきっちり撮れるということで、デジタルESP測光、弊社のデジタルESP測光を更に発展させて、採り入れてます。詳しい狙いとかは、担当の樋口の方から。言いたい事なんでも言って下さい。

樋口 やっと出番が。樋口といいます。私の方で、ESP測光、ホワイトバランス、あと色作りですね、あと階調特性とか、絵作りの方をすべてやらさせていただきました。そうですね、ESP自体は、弊社の方で、L型の方からずっと技術は蓄積されていますんで、その方式をデジタルに当てはめると。当然、ラチチュードとかいろいろ問題がありますんで、銀塩の技術をそのまま投入することは出来ないんですが。それを、デジタル用にチューンして、入れ込みました。というのが、デジタルESPですね。まあ、出来としては、なかなか良いかなと。手前味噌ながら思っております。

山田 たとえば、デジタル用にチューンしたのは、たとえばどの辺りなんでしょうか。

樋口 えーとですね。主に、フィルムカメラというのは、ポジはちょっと別なんですが、ネガの場合だと、ラチチュードはプラス側に大きくあると。ですので、どちらかというと、カメラ側としては、明るいものは明るく写すというような思想があって、プラス方向に振ろうという傾向があります。
 ただそれが、デジタルで同じようにやってしまうと、完全に白飛びして破綻してしまう。その部分で、一番大きい問題として、まず挙がってきまして、その部分をどの位オーバーで押さえておけばいいのかと。それはその実際、カメラのγカーブといわれる特性に合わせて作り込まないといけません。その部分でですね、チューニングが一番苦労したところです。

朝倉 最後の最後まで、チューニングしてました。

山田 そうですよね。割と、ハイライト基準測光まではいかないけど、それに近いイメージで、受け取ればいいんでしょうか。

樋口 そうですね。ハイライト基準と言われると、どうなんですかね。そっちの傾向と言う風に捉えてもらえばいいかと。

山田 たとえばですけど、輝度域が広いものに関しては、そのγカーブを寝かせるという風なことはしていないんですね。

樋口 していません。その部分は、割り切ったというか、それは勝手に今回ヒストグラム表示というのが付いていますんで、撮る方にお任せするというようなイメージになっているんですけど。あと、ホワイトバランスとかについては、私2500も少しだけ(笑い)関わっていたんですが。結構、嫌だとか、良くないという批評をですね、いただきまして、改善をやらせてなんとかやってきたということです。

山田 その、ホワイトバランスなんですが、もちろんオートでうまく行かないシーンは、それなりにあると思うんですが。前よりは、だいぶ良くなったかなという気は、正直言ってあります。ただその、このボタン。

樋口 ワンタッチの。

山田 ワンタッチの。これ好き嫌いなんですが、このワンタッチのをもうちょっとうまく活かせなかったのかなと。このボタンをね。という気はなんかしているんですよ。

朝倉 もう少しというと...。

山田 たとえば、普段5500で撮ってて、これを押すとオートに、押している間だけオートになるとかね。
 
朝倉 押している間だけオートですか。

山田 たとえばですけど。もちろん人によっては、その逆も当然あると思うんですけど。なんか、そんな風な使い方が出来ないのかなという気はしたんですけど。ホワイトバランスに関しては、銀塩の場合フィルムを変えるしかなかったというか、フィルター変えるしかなかった訳なんですけど。ただデジタルカメラの場合は、それがもっと自由で、その自由さをもっと活かせるようなやり方というのがあるのかな、という気が僕自身はしていて。
 で、デイライト固定しているのもなんか悔しいし、オートホワイトバランスで、不安がって撮っているのもなんか嫌だし(笑い)。そう言う意味では、なんかもうちょっとやりようがないのかなというのと、オートホワイトバランスじゃなくて、プリセットのバランス取るときでも、レンズキャップがなんで乳白じゃないんだろうとかね(笑い)。あれが乳白だったら、それはそれで使いようがあるわけですよね。

朝倉 そうですね。そういうワンタッチホワイトバランスの時には、使えますね。

山田 だから、なんかこうほんのちょっとしたことなんですけど、そういう一工夫というのがあると、なんかもうちょっと嬉しいかなという風な気がしたんですよ。

朝倉 瞬間的に、ホワイトバランスが何種類か、簡単に切り替えながら撮れるということですかね。

山田 そうですね。ホワイトバランスボタンを、ダブルクリックみたいにすると、中に設定した自分のカスタム設定になるとか。なんか、行けそうじゃないですか。

朝倉 デジタルの世界では、逆にそういうところがこれからいろいろ、ユーザーに対する仕様ということでは、発展させて行く必要があるかと思いますね。このE-10に関してはですね、特にホワイトバランスは、デイライトを外に取ったときに、どんなシーンでも間違わないというところを、まず最優先に今回樋口の方にやってもらいましたんで。まあ、銀塩カメラの場合は、普通のデイライトフィルムを入れていただければ、もうどんなとこで撮っても、後ろが、背景が木であろうが、白い壁であろうが、何であろうが、全部色は正しく撮れるわけですよね。そこが、デジカメというのは撮れないものが多いです。今回は、もう間違ってても外ではちゃんと撮れると。どんなことがあっても外では撮れると。逆に万能が、すべてのシーンがホワイトバランスを取れればいいんですけど、逆に、人口光源ですね、蛍光灯のとこでもちゃんといい絵を撮るというのは、なかなか難しく、逆にそっちの方を犠牲にしてでも、外の方で間違わずに撮るという、そっちを優先させて、いわゆる銀塩的な使い方が出来るようにというのが、今回のホワイトバランスの狙いとしています。

山田 いや、僕自身がすごく心配性なんで、どうも5500に固定したがるんですけど。そういう風に使うと、その手の開発をしている方が、すごく悲しい顔をするんですけどね。(笑い)

朝倉 ただ、普通の自然光ですね、外の。必ず5500かっていうとそういうことではないですから。6000の時もあるし、6500の時もありますから。そういう時はオートにしていただいた方が、絶対いい絵が撮れるますね。

山田 ただ、そこは僕の個人的な意見なんですけど、フィルム育ちだと、日陰は青い方が綺麗なんですよ。それで、曇りの日はやっぱり、ってそういうところがあるじゃないですか。で、どうもデジタルカメラから育った人って、その部分の色の感性っていうのが、違うんですよね。テレビカメラ系の、あっちのカメラ系の方が、大抵どういう天気の時でも、必ずホワイトバランスをグレーで撮っちゃいますよね。そうすると、なんか味気ない。あとで編集するとそれが一番いいって言い方するんですけど。ただ、スチール側で、一発で見せる人から言うと、味気ないわけですよ。

朝倉 雰囲気が出てないと言う。

山田 雰囲気が出てないっていう。そういうところの感性っていうのは、オートホワイトバランス育ちの人、というのはちょっと違うんで、どっちが正しいとは言い切れないんですけど。ただ、どうしても雰囲気がないと言われるのは、そこがもしかしてひとつネックになっているのかな、という気がしているんで。あとは、肌色がおかしいって言う人も、結構そういうところがあると思うんですよ。なんか、そういうところが、もうちょっと簡単に、打開できそうな気がするんですけどね。

朝倉 今回これを担当した樋口はですね、ずっと銀塩で、銀塩派なんで、かなり今回はいろんな数あるデジカメの中から、銀塩に寄ったホワイトバランスだと思います。(笑い)まあ、このカメラのコンセプトがそうでしたから、それを忠実に、感性を仕上げてくれました。

樋口 その代わり、蛍光灯を撮った時にも、銀塩っぽく(笑い)。

山田 蛍光灯ね。蛍光灯に関しては、各社とも意見が分かれているんで、その辺はどっちが良いとは言えないと思います。


●カメラの格にあわせた色調


山田 あと色調というか、彩度というか、その辺りなんですが、やっぱりちょっと赤系の強いやつを撮ると、違和感があるのではないですか。あれは、そういうものなんでしょうか。

樋口 正直言って、非常に難しいところがありまして、世の中に存在する色を、すべて撮った絵の中に入れるというのは、基本的に厳しいんですね。で、ある領域を、もう決めてしまうしかないんですけど、それを広い範囲ですり込ませようっていう風にすると、やはり、少し実際色が、ぱっと見た色がくすんでいるっていうような形になってしまう。逆に、すごく普通に撮った絵が、「鮮やか」っていうようなイメージにしてしまうと、今度それは、そういった赤い色を撮った時に、全部潰れちゃって、もう階調もなにも分からないというような状態に、どうしてもなってしまう。その中のバランスで、どこを狙いましょうかというところでですね、これ非常に悩みました。
 今回赤のレベル、赤だけじゃないんですけど、実際彩度自体は、今まで我々が2500とか、1400とかよりは下げています。明らかに、分かると思うんですが、下げています。これはやはり、高級機ということで、「色がサチってしまうのはまずいでしょう」という主張がありまして。ただ、見た目が良くないのも、それまた困ると。というところでですね、今回作った点が、一応我々が最適という風に思ったポイントということになりますので、ものすごく赤いものを撮るとやっぱり、少しのっぺりはしてしまう。ただ、その起こり具合は、今までのものよりは、はるかにいいということです。というところで、決めているんです。


●使いこなしが必要なRAWモード

山田 今回、RAWモードを付けていますよね。RAWモードの場合は、その辺は、もうちょっと後処理で救えるんでしょうか。

樋口 えーとですね。ローの方を開く方法としては、今のところ、二通りあります。ひとつは、キャメディアマスターで開いて行きます。もうひとつは、専用のPhoto ShopのPlug inで開きます。キャメディアマスターの方は、基本的にそういう操作は出来ません。普通に開いてしまうと、それはカメラが撮ったものと同じ絵が出てしまう。

山田 なっちゃうんですよね。

樋口 で、Plug inの方なんですが、こちらの方も、三つモードがあるんですけれども、全画像処理という方をですね、選びますと、キャメディアマスターで開いたのと同じです。ですので、実は、ユーザーの方に簡単に色合いとか、というものを操作してもらうというようなインターフェースにはなっていないんです。で、もしやっていただくとすれば、ホワイトバランス自体は、選べますので、Plug in上で、ホワイトバランスはどっか自分の好きなところに合わせていただくと。その後、RGBのみというのと、ホワイトバランスとカラーマトリックスというのがありますよという、ふたつのモードというのがありますので、どちらか選んでいただくと。そうするとですね、そのふたつは階調特性をかけずに、γをかけずに開きます。ですので、その状態で、好みのγ、あと色付けですね、これをやっていただければ、Photo Shop上でですね、出来るという、ちょっと不便な構成になっちゃっているんですね。

山田 その時って、12ビットで開くんですか。

樋口 元々、内部では当然16ビットの精度はないんですが、Photoshopに渡す時に、16ビットのチャンネルにリサイズして、渡しているんです。

山田 その部分で、ある程度はいじくれると。ただ、いわゆる、たとえばコダックなり、なんなり、業務用のモデルみたいに、一からやるというのは、という仕様ではないんですね。

樋口 そうですね。Photoshopに熟練された方なら、出来るという感じなんです。

山田 そのへんで、まあ正直、E-10を使っている方が、そういうところまでこだわるかどうかは分からないんですけど、まあある意味では、そういう絵を作る楽しさっていうのを、ユウーザー側にちょっとだけ渡してあげるというのは、それはそれで面白いことかなと思うんで、なんかその辺、もっと素直にPhotoshop側に渡せるなり、なんなりっていうのが、もうちょっと簡単に出来ると、嬉しいなと思うんですけどね。

樋口 そうですね。

山田 でも、だいぶ良くなりましたよね。すいません、私はC-1400Lの絵が大嫌いな人だったんで、(笑い)あの絵のままで、あの絵がデジタルカメラの絵だっていう風に思われるのが、すごく嫌だったんですよ。あのー、鮮やかだけど、階調がないっていう、べたっとした。なんで、そういう意味では、今回の絵って、割と扱いやすいし、それが実は今回これをお願いしたきっかけなんです。実は。すごく好きなんですよ、これ。

樋口 モードによっては、1400系の絵も撮れるんですけどね(笑い)。階調を、ちょっとハイにして。


●E-10は100点満点!?

山田 そうですよね、確か。でも、その辺は両方あって本来はいいんですよね。あとは、ほぼ最後にお聞きしたいのは、何点でしょう。開発した側としては。100点満点のうちで。

朝倉 (笑い)難しい質問ですね。ただ、いろいろ出来たとこ、出来なかったとこがありますけど、思った程よく出来たとこもあるんで、100点! 平均して、100点ということで。(笑い)大体、狙い通りに行ってます。狙い以上のとこもあります。ちょっと時間切れで、少し未達のとこもありますけど、100点です。


●難しい階調再現性

山田 他の皆さんも、時間がなかった方もいるかもしれませんが、ほぼそんな感じですね。この次展開って、なんか考えていらっしゃるんでしょうか。って、一番聞きにくい事を聞きますが。

朝倉 はい。一番言いにくいとこで(笑い)、分かっているから言えないとこもあるんですけど。当然、この先のものをどんどん今仕込んでいます。

山田 この先、正直なところ、解像度を優先させて行くのか、階調性を優先させて行くのかってで、考え方が違ってくると思うんですが。その辺はどうなんでしょう。

樋口 そうですね。これは、難しいんですけど。画質が落ちないのであれば、って言う仮定があるとすれば、解像度はあってもいいんです。当然。ですので、画素数が増えていくと、当然解像が上がっていきます。画素数を増やす方向というのは、画質が落ちない、という前提の元に成り立っているんです。それが実現出来るのであれば、それは当然向かって行かなければならない。ただ、技術的にそこが無理だとすれば、今ある、持っている駒の中から、解像力をある程度に押さえて、階調もしくは、色再現っていう方向に改良を進めて行く。だからそれは、どちらかと言うと、世の中の流れって言うんですかね、周りの技術の状況とかを判断した上で、進めて行かないと、どちらとも言えないかなというのが、私の今思っているとこなんですけど。

朝倉 「解像度=画素数」という考え形だけでいくとですね、これはお客様がどういう使い方をするかによって、いろんなカメラが、お客様に合ったカメラがあるかと思います。その中で、たとえば200万画素で十分だという使い方のお客さんがあったとします。そこは、もうあとはどんどん階調表現を豊かにしていくという流れだと思います。それから、大伸ばし等を、どうしても業務上必要だという方は、まだまだその画素数、解像度が必要だと思います。逆にそのお客様に向けては、階調表現というのは、あるレベルあります。それ以下のものは、やっぱり出すつもりはありませんから、必要なレベルを確保しつつ、解像度をどんどんまた増していくと、いくつかの流れがあると思っていますし、今そういう開発を進めております。

山田 あとは、結局階調の話になっちゃうんですけど、どうしてもパーソナル機の場合は、階調性が今ひとつのところがあって、立体感がでにくいっていうところはどうしても出てきちゃうと思うんですけど。それって、もしかしたら輪郭の立て方ひとつで変わりますよね、もちろんプリントサイズによってですけどね。立て方ひとつで、結構変わって行くのかなっていう気もしてて、その辺のバランスっていうのは、なんか解があるんでしょうか。

樋口 そうですね、階調、あの、すごく難しいところを聞かれまして。本当に限られた中に絵を押し込めないといけないと、まあ、ラチチュードのせいにすれば、どちらかというと階調はずれる方向に行く傾向にあるんですけどね。で、非常に難しい問題ではあるんですけど、ただすごく階調を熱して、ラチチュードを広く取って、だけどその絵を撮ろうとすると、結構全体の露出レベルが暗めになるんですね。だから少し、こう、ぱっとしない画像に、もう暗くなっちゃうんですよね。絵自体が。なんて言うか、結構富士山のやつはその傾向にあると思うんですが。そういう絵になっちゃったものに対して、輪郭を立てるっていうことをやったとしても、あまり見た感じは良くならない。で、そこがですね、我々としてもですね、何かいい手はないのかといつも思って、解決できない部分ではあるんですけど。

山田 それは、各社とも相当悩んではいますよね。ただ、カメラのクラスによって、割り切っちゃった方が奇麗だというところもあるだろうし。上の方のモデルは、あくまでも階調優先させて、ある意味では、ユーザー側の技量に頼るところがあってもいいのかな、という気もするし、その辺はまだみんな割り切れてないのかな、という感じはします。

樋口 そうですね。

朝倉 今、山田先生がおっしゃられたように、ユーザーによって、そこら辺がやっぱり狙い目というのは違うとは思いますね。本当に、130万画素、もしくはVGAでパチパチ撮って、ネット上で送るというお客様用と、それから、作品を残す、あるいは仕事として使う方っていうのは、絶対狙いが違うと思いますから、それぞれのカメラの、ターゲットのお客様に合った、作り方をして行くっていうのは、間違いないとこだと思います。

山田 やっぱり、今回のモデルみたいに、結構ユーザーがある程度見えるじゃないですか。で、見えるカメラだからこれだけ、完成度が高められたと思うんですよ。中堅どころから下って、まだユーザー見えないところがちょっとあって、そういうところは、ちょっと派手めにした方が、良い。まあ、派手め、固めの方がいいっていうところもあれば、それでも、もうちょっと柔らか目にしておいて、無難な絵にしようというところもあるし、その辺りがまだまだ各社とも見えてないところがあるのかなっていうのと、あともう一つは、フィルムメーカー系が最近、結構良い絵を作ってきてると僕は思っているんですけど。多分、肌色を、色の中でどのライン上に置くのが一番違和感のない、違和感のないっていうか現実とは違うんだけど、奇麗に見える肌色かっていうのがありますよね。その辺りっていうのが、フィルムメーカー系のところっていうのは、やっぱ、ある程度持っているじゃないですか。ベースを。そうすると、そういうところに、結構持ってきているんで、普通の人が喜ぶような絵っていうのが、見えてるメーカーと、それ程でもないメーカーが、分かれ初めちゃっているのかなという気がするんですよ。だから、上の方のモデルでこういうのがでてくると、今度はその中堅から下の方のモデルで、どういう絵を作ってくるのかなっていうのが、逆に個人的にはすごく楽しみなんですね。

朝倉 我々も、今回E−10で、上の方のを出しましたけど、これから下の方というのは、まだまだ改良点というのがたくさんあると思ってますので、色作り、絵作りは変えて行きますから、より良いものを。樋口は、かなり次の機種はこうしようなんて、いろいろ構想を実は持っているみたいですけど。今日は話せないんで(笑い)。じりじりしていると思います。


●高まる次機種への期待

山田 大変ですよね。あとは、すいませんちょっと雑談ぽくなりますが、これ作ってて、開発スタッフで、体壊した人っています?(笑い)

鈴木 最後の、ファームフィックスした後に、倒れました(笑い)。その途中では、無かったですけど。

朝倉 終わるまでは、みんな何とか頑張っちゃうんですね。終わると、はーっと気が抜けると、風邪引いちゃったりしてますね。

鈴木 追い込まれている時はですね、現実逃避で、倒れたいなって思うんですけど、体の方が倒れないんですよ(笑い)。そういうところだけは丈夫に出来てて。

山田 そうですよね。実は、普通の、普通にデジタルカメラを使っている側の人って、そういうのって全然分からないじゃないですか。で、結構、僕が良く言うのは、人を幸せにするために、自分が不幸になるのが、デジタル作っている側の人間だって言うんですけど(笑い)。みんな体壊しながらも、頑張ってますからね。

朝倉 みんな開発者っていうのは、もの作るのが好きなんですよね。だから、やっぱり頑張ってしまえるというとこがありますね。ものがどんどん良くなって行きますから、そこはやはりやり甲斐につながっているんだと思いますけどね。

山田 あとは、そうしても100点、というか100%っていうのが無いじゃないですか、製品の場合は。どっかで妥協しなきゃいけない訳で、その辺りで、みんなストレス溜まってる方が結構いらっしゃるんで、最近。で、「次はやるぞ!」と言いながら、倒れてたりするんで(笑い)。個人的には、是非E-10ベースの上級機というか、本当にやりたかったことを見てみたいというのが、正直あるんですよ。僕自身、車好きなんで、市販車って、それプラスその本人たちがどうしてもやりたかったことって、ちょっと別にある訳じゃないですか。どうしても、最大公約数になっちゃうんで。そういうカメラも、見てはみたいんですよね。ただ、それが売れるかどうかっていうのは、全然まったく責任持てないんで。たとえば、100台限定とか、受注生産とかね。でも今だと、ネット上でそういうのって、出来る状況になってるんで、なんかこうそういう、本当にやりたかったことっていうのが、ちょっと見てみたいなっていうところは、正直ありますよね。逆に、デジタルの一眼レフの方は、結構量売るっていう方向に動き始めちゃったんで、だからそういう意味では、究極の完成度よりもっていうところは出てきちゃってるんで。むしろ、このクラスの、ある意味ではそれぞれのパーツを、限界まで使っているところっていう方が、そういうところの面白さっていうのがあるっていう気がするんですよ。なんで、そういうのを見せて頂けると、とっても嬉しいなと。その、倒れない程度に(笑い)。そういう風に思います。

朝倉 まあ、E-10クラスだと、最大公約数と言うよりも、もっと技術的に完成させたかったっていうのはみんな思っています。開発者は。

山田 みんなありますよね。

朝倉 はい。やっぱり、時間的な制約とか、あるいは、この技術を入れたいけど、そのためには技術レベルですね、いろいろ世の中の技術レベルが、まだ達してないと。後一年であるとか、後半年とか、後二年とかいろいろありますけど、実はそれを入れたいけど、まだ今のレベルでは、ハード上出来ないとかね。先に出来ることは見えてますけど、そういうのが結構みんなジレンマというか、希望としてあると思いますね。これはね、いつまでたっても続くような気がしますね。一年後には、また同じようなことを考えていると思いますね。一年後に出来たとしても、また先が見えますから。

山田 そうでしょうね。そういう意味では、すごく夢のある商品なんで。だから、みんなで良いものをそろえて行けば、いいなと思うし、今回お願いしたのもユーザー側の人に、誤解されたくないっていうのがあるんですよ。どうしても、ユーザー側から見ると、いろんな仕様があっても、何故だっていうのが分からないじゃないですか。で、そういうところで変な誤解を招くのも、すごく嫌なんで。で、そういうところもあって、すごい長時間になっちゃいましたが、今回お願いしました。とりあえずこれで、この辺りで僕の方からの質問は、こんな感じなんですが。これは、原稿に起こすのに、結構な日にちがかかると思うので(笑い)、気長に、いつ載るのかなと思いながら、クリックして頂けると(笑い)嬉しいんですが。
 最後に、写真が自分の趣味だという方、いらっしゃいますか?。

朝倉 私は、会社入る前から、写真趣味だったんですけど、段々仕事でやっていると、趣味なのか何なのか分からなくなってきてですね(笑い)、仕事と趣味の境目がなくなってきて、自分の楽しみで写真を撮ってても、なんか仕事で撮っているような気になっちゃうのは、良くないですよね。趣味で純粋にやろうという身では。私としては。

山田 でも、なんか写真好きの匂いがしますよね。このカメラね。(笑い)

朝倉 そうですか(微笑)。

山田 では、長時間にわたり、本当にありがとうございました。


(2001年2月22日公開)




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