デジタルシステムによる
最適な画像の表現


イーストマン・コダック社
イメージ サイエンス担当
イメージ エンジニアリング&シミュレーション研究所所長

ジュリー・H・スキッパー

       (Kodak デジタル テクノロジー セミナー講演資料より)





コダックは画質に関する研究を行っている。コダックは今まで何十年間も写真システムという成果を蓄積してきた。人はどのような写真画像を好むのかをデジタルシステムの設計の際にも活用し、デジタル システムに最適な画質を使っている。この説明の背後にもこれが存在するので、ぜひ強調しておきたい。

まず画質とは何か。それは人によって定義が違う。この点に関してもこの説明の中で述べて行きたい。

第2点目のテーマは、イメージ クォリティーのモデル化である。

第3番目は、コダックのデジタル画像処理の実践について取り上げたい。これは、収集した情報をどのようにシステム デザインとして最適化するかということである。

最後にユーザーの重視点をどのように活用するかについて取り上げる。画質はシステムの評価全体に直接的な影響を与え、ユーザーの重視点にも目を向けることが重要である。



画質がめざす目標は何か。

コダックがしばしば使う画質の定義は、元々のシーンから撮影者が受ける印象と一致する画質を出すことである。

この定義には個人差があるため、撮影者によって違うことがある。二人の人間が同じ場面を見てもそれぞれが受ける印象は非常に異なる。見る対象さえ違うかも知れない。ということは、必ずしも元々の場面の忠実な再現が最も高い画質とは言えないということのなる。

「カラレムトリー(ふしょく学)」という学問がある。実際の場面の色と、ユーザーなりカスタマーが求めている色とはどう違うのか。ある場面の前で受ける色の印象は何か。これは心理的な要因もあり、それを考慮することも重要である。



コダックはどのようにして色の測定方法を編み出しているのか。

主観的な観点からも研究している。

我々の目指す目標は撮影者の認識、印象を測定することである。これには非常に多くの人々に対する観測が必要で、データベースを作ることが重要である。

一方、客観的な画質は「測定」である。

客観的にある現状を測定することだ。ここでは物理的な特性の測定が大事である。ここで大切なのは、主観的な画質と客観的な画質を連携させるということであり、両者の橋渡しを行なうことである。

これによりシステムの設計では主観的な目標も組み入れて、それに対応して、我々がどうやったらそれを達成することができるかという、客観的な測定を当てはめていくことになる。




では、画質の判断はどのようにするのか。

我々が画質を測定したいと思ういろいろな方法のスケールがある。ハイリスクから低リスクという格付けをしているが、ハイリスクの状況は例えば企業で管理職が全ての決定をすることで、これはハイリスクである。そのようなシステムデザインは好ましくない。

時間の経過により、顧客との関係がより緊密になってくる。

顧客はどのようなものを表現したいと思っているかを知る機会がある。低リスクの状況は、代表的な顧客、標準的な顧客を得るということである。

顧客に常にそこにいてもらうことは不可能なので、製品比較を行なったり、コダックの社員を適切に訓練して顧客の観点から画質の判断をさせる。

コダックは訓練を受けた、判断ができるような社員に投資をしている。そしてイメージの画質と画質の尺度を編み出している。尺度と画質の判断を関連づけ、全てのアプリケーション、全てのシステムに対して関連付けて判断されるようにしている。



ここで実例を挙げたい。ここにある二つの写真はそれぞれ異なっている(※プレゼン時の写真データなし)。

 ここで皆さんに顧客の立場で、どちらの写真の方が好ましいか聞いてみたい。この写真の主要なテーマは何かについても異なるだろう。

こちらの写真は背景がより暗い色になっている。皆さんは背景が暗いと思われただろうか?この写真のテーマは「女性社会」である。この場合、女性が座っている背景はあまり重要ではない。あるいはこちら側の写真は背景の情報がもっと表に出ている。顧客はこちらを求めているのだろうか?

このようにシステムのデザインは非常に困難であり、コダック側でその決定をしなければならない。顧客は背景の情報をも求めているのか?あるいは女性の画像を求めているのか?ということである。この例によって微妙な難しさをわかっていただけただろうか。



次に、画質のモデリングということになると、我々が測定対象にできることはいろいろある。

コダックのプロ用製品で、昨年我々が開発した「エクタクローム100VS」という製品がある。

このフィルムは、我々がプロのカメラマンと開発したものである。世界の異なった地域である製品の目標を研究サイクルの早い時期から設定したが、その目標を達成する方法としてシステムのモデリング能力を活用した。

シミュレーション技術を使い、イメージ、画像を作り出し最終製品に近いものを作り出す。これは実際の製品を作る前にシミュレーションして作るということである。先程質問があったが、システムの色をどのようにデザインするのかということである。

「エクタクローム100VSフィルム」は、全世界のプロカメラマンが開発したものである。


もう一つの例は「ポートラシステム」である。これもやはりシステムのモデル化を行なう。そして、プロカメラマンに何が好ましいか、好ましくないかの判断をしてもらう。そしてこれをシステムの目標として使用する。全世界のプロカメラマンの意見をインプットし、地域ごとに商品の目標をどこに設定するかを決定した。


コダックのプロ用カメラの設計はこのような過程を取ったので、将来的には消費者用イメージングにもこれを応用したいと思う。

特にデジタル システム、あるいはデジタル画像処理技術をもって、将来的には自分たちが好ましいものをダイヤルインするということも可能になるだろう。

以上のことから、画質のモデリングを考える場合にまずシステムを測定する能力が必要である。次に一連の典型的なシーンを作り出し、商品テストができるようにする。

そしてその場面、シーンのバリエーションを付け、顧客の好みに関するデータベースを構築する。その後、物理的な測定値と主観的な判断を関連づけるモデルを作る。




これら2枚のスライドは、我々がどういう形で画面のバリエーションを作るかを示している。その後に顧客の判断求める。

このスライドを「クリッピング」と呼んでいる。例えば露光の調整やハイライトやシャドーの情報を変え、トーンスケールで情報を少し変えるものである。ここではサンプル画像として4つの異なったレベルのものを置いている。

こうした画像を判断してもらった結果のデータと、物理的な特性の測定とを関連づける。そして両者を関連づけたモデルをここから作成していく。




もう一つの例はJPEGによる圧縮である。これはそれぞれブロッキングのレベルが違う。




画質のモデリングをする時はこうし技術的なデザイン上の問題に加え、我々が対象としているシステムに対してユーザーとのやりとりによって反応をうかがう。

機能対パフォーマンス(性能)に関する考えも出す。これは最後に述べる。

ここでは「フォト スペース」という、もう一つの概念に関しても述べたい。




システムの機能対システムのパフォーマンスについて説明する。

画質テストを行なう時に重要なことは、典型的な場面に十分なバリエーションを付けることである。そして、このシステムを顧客がどう使うか、用途の幅を考え、バリエーションを用意する。

テストの対象範囲が狭すぎることがよくあるが、その場合にはシステムの能力だけを見ることになる。

これは、全て調整され、完璧な状態だった場合に、このシステムから最大限引き出し得る能力、機能は何かを見ることになる。




一方、パフォーマンスは、さまざまなバリエーションに対応しようとするもので、多くの画像で大幅な画質の分布を対象に見る。その例を挙げてみたい。

品質の分布が資料に記されている。横軸は品質で、数が多いほど画質が高いということである。縦軸はこのシステムが作り出す、それぞれのプリントの数、それぞれの品質のところで何枚のプリントが出てきたかということであるが、曲線の最後を見ると、このシステムの能力が最高点というところでは同じである。

すなわち、どれも110位の質のプリントを作り出すことはできる。

しかし、システムの質分布の変動性を見ると大きく異なっている。
我々がデザインの対象として目指すのは、低品質のプリントを出さず、何枚プリントしても全てがハイエンドのところに集中して出てくるシステムである。

赤い曲線は、このシステムの変動幅が大きいことを記している。また、ピークの品質は35位のところにいちばん多くのプリントの数が出てきている。

一方、緑の曲線で記されたシステムでは、変動の幅がバラつきが少なく、平均の質が100位のところで納まっている。

このようなバラつきの少ない質の高いシステムの方が良い。



次に撮影場面の理解について、そして消費者がこのシステムをどのように使って性能に対する情報を得るのかについて説明したい。

ここで使うのはフォト スペースという概念である。

資料中に光の輝度を示す軸がある。他方の軸は被写体とカメラの間の距離を示している。そしてこちらはプリントの枚数である。各距離、そして輝度においてプリントができている。これはISO400のシステムで非一眼レフカメラを使用したものである。

では、その活動が最も活発なのはどこだろう?

それは距離が長く、そして輝度の高い場面であるということがこの部分から読み取れる。ここの領域は野外の場面を示している。

もうひとつ活発な領域がある。輝度が低く、距離が短いものである。これは室内でフラッシュをたいて撮った写真に相当する。

我々はこのような図、またはデータベースを持ったカメラを、顧客が実際にどのように使うかを理解している。そしてこのような情報を使ってシステムの設計最適化を図っている。



もう一つ画質に関する要素がある。

システムは最も弱い部分以上に良くならないということである。

画質の特性は相関関係を持っている。コダックはこの相互作用を検討し、システムの性能モデルに組み込む。我々は研究開発費をどこに集中させ、システムの改良を図るべきかを見極めている。

この資料は一つの例である。品質を表す等高線であるが、画質に関して2つの側面をもっている。

その一つは肌理(きめ)である。ここでも数字が高い方が肌理(きめ)が粗いので、画質が下る。もう一つはシャープネスである。これは数字が大きいほど質が高い。

こうして、持ち続ける価値もないような画像から、すばらしい高い質の画像まで、一連のものをカバーすることができるのである。

もし仮に私のシステムの肌理(きめ)が70で、シャープネスが26〜27程度であったら、そこに投資をし、より肌理(きめ)の細かい画像の開発をしても意味がないということがわかる。なぜなら、私がどれだけきめ細かな画像を開発できても、その質という意味では普通の領域を脱することができないからである。

ここで制約的な要素となるのが、シャープネスである。

このシステムでより良い画質にするためには、シャープネスを上げなければならないということになる。このような解析、調査を通して、我々はシステム パフォーマンス モデルを構築した。

コダックはこうして写真システム、デジタル システムを評価してきた。



では次にコダックがどのようにこの情報を活用しているのかという話題に移りたい。




まずシステム デザインの話から始めたい。




この資料は画質を表す実際のデータである。

X軸の数値が高い方がより良いということになる。そしてY軸は累積の分布である。これは、このシステムのために収集された全てのプリント数が100%で表される。このシステムのピーク品質は双方の曲線に対して110くらいである。

ここでは固定焦点とオートフォーカスの際をこのグラフで説明したい。

ここでピークが同じであるということは一目瞭然である。もちろん、焦点がきちんと合っていたという前提条件あっての上での話だが。

しかしピントが合っていない場合、数枚のプリントの質が低いという結果がある。プリントの50%のところを見てみると、固定焦点のシステムでは質は60になっている。一方オートフォーカスのシステムでは72から73相当になっている。

我々はモデルを構築するために、数多くのデータを集める。そして実際のシステムを手懸ける前に情報収集をしている。




さて、システムが完成した際、デジタル画像処理を経てこのシステムを変更させる方法が3つある。





一つは補正で、システムの欠点、または制限、制約などを補う補正である。




二つ目は改善である。質を改善し、次の次元まで質を高めていく。最後は能力を十分発揮するということである。

ボーダーやフレーム、マンガ、風船など、デジタル システムでは予想もしなかったものを使用する。







こうした能力を提供するにあたり、システムを「単純」処理にし、画素を全て同様に扱うこともできるが、「スマート」な処理にすることもできる。

この対応処理は、画素の周りの値を見て、そのシーン全体に適応するアルゴリズムで調整をはかる。

また、「スマート」な処理では画像全体、または画像の隣接したイメージなどをとらえて、プリントの中でストーリーを作ったり、あるいは求められているストーリーが何かを解釈する。





最後に、ユーザーのシステム重視点の話をする。これがデジタル イメージングの現状であると思われる。

数多くのインタフェースがある。伝統的なフィルム、デジタルカメラ、モニタ、インターネットなどにイメージを提供するデジタルカメラ、プリントを靴箱にしまっている人もいるだろう。

フラット ベット スキャナー上でこれをスキャンすることができる。こうして複数方向へ出力へ提供することができる。

コダックはユーザーの重視点を支援するという意味で、情報を共有化して行きたいと考えている。





これもユーザの重視点を高めるもう一の方法だと考える。そしてユーザーの画質のとらえかたを高める方法であると思う。

このシステムは使い易くすることができる。そのために操作は自動的になされるべきである。しかし、美的効果を高める操作なら直観的なユーザー コントロールの機能も提供しなければならない。

また、その他のデバイスとの接続性もシームレスにされなければならない。

さらに画質は、ユーザーの能力によって制限、制約されるべきではない。

また、ユーザーの設定に頼ることなくなされるべきである。





このようにして画像はコミュニケーションをとることができる。

ファイル フォーマット、使用可能なメタデータ、マルチプル レゾリューション、画像独立処理、ジャスト イン タイムの表示、出力時の表示/非表示情報の選択、画像の提供先、そして「スマート」な画像処理を提供することによって、全てのユーザーがメリットを感じられるものである。





コダックはこのシステム全体を部分的に保有しており、優位な位置にいる。入力から出力まで、情報を最も「スマート」な形で流すことができる。





さて、先程述べた最もつながりの悪いところが画質を決めるという話に戻ると、ここからいくつかの例を示すことによってそれがよく理解できるだろう。

デジタルカメラの設計段階で、素晴らしい画質を提供するものを開発しても、キャリブレーション済みのプリンターなくしては何の意味もない。

すなわち、下流でキャリブレーションされているプリンターなくしては高画質デジタルカメラは何のメリットもない。

先程シャープニングはどこで、どの段階でするかの話をしたが、まさしくそういうことである。

また色再現も同じだ。例えばシステムで広範囲な色再現領域を記録できるものを持っていても、その情報を早く失ってしまったら広範囲な色再現領域を印刷できるインクジェット プリンターの意味がなくなる。

インプット情報を活用できるようなものにしなけければならないということである。





コダックはシステム全体を理解している。我々はさまざまな方法やデータベースで画質を改善する調整を図ることができる。

私が話したシステム モデリングを「エクタクローム100VS」や「ポートラ」などに使用することで、開発コストを削減することができている。

コダックは継続的に根幹をなすコンポーネントの開発をしており、「スマート」なアルゴリズム、End to Endに使用できるものを開発している。

そして適切なメタデータを認識することにより、「スマート」な画質処理アルゴリズムを作り、その結果画質処理を通して補正向上させ、魅力あるシステムにすることができる。




コダックはデジタルシステムにより、
適切な画質を実現する。



[end]

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