『寒立馬にはエサをやってはいけません』
そんな注意書きがあったのに、私は持参した人参をこの白馬に与えてしまった。
なぜエサをやってはいけないのだろうか?
実際にエサを与えてみると、その意味がよおく分かると思う。

マヨネーズを付けて食べる生の人参は、人間が食べても甘くて美味しい。(もちろん、嫌いな人もいますが)
ましてや食料が乏しいこの時期の馬にとっては、目が飛び出るほどの御馳走らしいのだ。
餌付けは、絶えず唇を地面になすりつけ、草を食べている寒立馬の顔を上げさせ撮影するには効果的な手段ではあった。
そうして撮影したのがこの写真である。
問題は、そこからである。

馬は人参がまだあると勘ぐり、私のウェストポーチに鼻を近づける。
銀塩一眼レフを共に持参していた私は、ポーチ内のフィルムを食べられては困るので、必死に逃げた。
するとこの白馬は、「もう一本、くれよん!」とばかりに牧場内を私を追って走り出したのである。
さすがにこれは怖かった。
サラブレッドほと速くないにしても、あの巨大な馬に追い掛け回される恐怖は、相当なものである。
その体験があってから、私は馬にエサを与えることを辞めている。
しかし未だに、ポーチから新たなコンパクトフラッシュを取り出す度に、この白馬は私を凝視する・・・
一時は縦に構えた長細いIXY-Dを人参と間違え、口をあんぐり開けたこともあったくらいだ。
こ、怖い・・・
5万もするデジカメを食べられてしまうことが・・・(^^;)