青森で桜が咲くのは、五月になってから。同じ頃、尻屋の森にも新緑の季節が訪れる。
これまで雪の下となった枯れ草を食べていた馬たちも、ありったけの緑を頬張ろうと森に暮らし食べ続ける。
馬の首が長いのは、何も地に生えた草を立ったままで食べれるようになっているばかりではないのだと、このとき感じた。
地上2m50cmほどの高さの蔦も、馬の長い首があれば、このように自由に食せるのだ。

そして、馬の唇はランドセルの皮のように硬い。
そうでなくては、地上の草を掃除機のように食べ続けることはできないだろう。
何も食べるものがない冬には、木の皮さえ食してしまう馬の唇は、実に都合よくできていると感じた。
毛蟹をたらふく食べた後の人間の唇のように、皮が剥ける事がないのだ。